2013年度さくら学院卒業式—そして僕らはまた新年度を迎える
2014年3月30日、渋谷公会堂にて、2013年度・さくら学院の卒業式が開催された。外はあいにくの雨だったが、スーツを着た父兄(ファン)で会場は満員となった。
年度が始まるごとに新しいスタートを切るさくら学院は、卒業式が集大成だ。「絆」をテーマに1年間かけて団結してきた2013年度の彼女たちらしい、笑顔に溢れた卒業式となった。そして、さくら学院開校時から在籍し、4年間を駆け抜けてきた、中3の堀内まり菜、佐藤日向、飯田來麗、杉崎寧々が卒業した。
森ハヤシ先生の贈る言葉——寄り道の話
今後は4人とも自分の夢に向かって別々の道を歩んでいく。3月28日の渋谷AXで行われたライブでは、それぞれの夢を語ってくれていた。堀内まり菜は声優アーティスト、佐藤日向と飯田來麗は女優、そして杉崎寧々は看護師だ。
この卒業後の夢について、卒業式で印象に残っていることがある。それは、担任の森ハヤシ先生から卒業生に向けたメッセージだ。まず佐藤日向のこと。森先生が書いた脚本のドラマに出ることが夢の1つと彼女が言っていたことを話し、森先生にとっての夢にもなったと言っていた。
そして、森先生は「さくら学院はいわばエリート校だ。だからこそ君たちには、寄り道をして欲しい」という旨の言葉を贈った。さくら学院を卒業する中3という年齢は、アイドルの卒業としては早過ぎる。だが、だからこそかえって、様々な寄り道をして経験を積む時間を持つことができるのかもしれない。
また杉崎寧々が芸能界を引退し、看護師を目指すことについては、いつかさくら学院卒業生の舞台をやるから、そのときはリアル看護師コントをやってもらうからな、とのことだった。半分冗談だったけど、泣いてしまった。森ハヤシさんはもう本物の先生だと思う。
森先生のメッセージは、最高の贈る言葉で、良い先生に恵まれて本当に良かったなあとしみじみ思った。
その他の詳しいレポは各種メディアに出ているので、ぜひナタリーのライブレポなどを見てもらいたい。
ナタリー - さくら学院、12人の“絆”が見えた卒業式
さくら学院の卒業式はなぜ素晴らしいのか
さくら学院は学校そのものだ。「成長期限定ユニット」というコンセプトのもと、メンバーは中学校を卒業すると同時に、ユニットも卒業する。そのため、毎年、卒業生を輩出する。そして毎年、年度が変わるごとに、最上級生の中3がリーダーとなり、1年間かけて、新年度のさくら学院をつくり上げていく。
僕自身、さくら学院の卒業式に出席するのはこの2013年度が初めてで、2011年度、2012年度の映像でしか観たことがなかった。映像で観たときから素晴らしいと思っていたが、実際に参加してわかったことがある。
それは、さくら学院の卒業式というイベントは、紛れも無く本物の中学校の卒業式、つまり15歳の少女が立つ人生の岐路そのものだということだ。これはとんでもないものを見てしまった、と思った。僕たちは少女たちの青春の瞬間を、チケット代を払い覗き見ている。だから、さくら学院の卒業式は素晴らしいのだ。
さくら学院が特別な理由——さくら学院という学校、見守る父兄
もっともアイドルのライブは多かれ少なかれ、そうした青春を覗き見る部分はあるのかもしれない。だが、数あるアイドルの中で、さくら学院が特別なのには理由がある。それは、青春まっただ中の少女たちが過ごす本物の学校であるさくら学院を、ファンは決して触れることのできない距離から見守るという構図、そこに全てが集約されているということだ。
詳しく説明していこう。まず、ファンとの距離感。さくら学院はファンとの握手会などによる直接的な交流がない。その意味で、完全に隔絶されている(しかし、イベントで肉眼で見て、声を届けることはできるというのがミソ)。これにより、父兄(ファン)は自然と、学校での少女たちの成長を見守るという姿勢になる。
そして、さくら学院が本物の学校そのものであるという点。これを作り出す最も大きな要素として、前述したように卒業があることが大きい。卒業があることで、年度ごとに代替わりがあり、まさに本物の学校の部活や生徒会のような学校らしさが生まれるからだ。だがそれ以外にも、さくら学院の学校らしさを生んでいる要素がある。
例えばそれはイベントだ。さくら学院が行うイベントは、1年を通して「行事」として決まっている。アイドルの対バンイベントには、TIFを除けばほとんど出ることがない。TIFもさくら学院にとっては「行事」の1つなのだ。
さらに、他のアイドルグループにあるような「目標は武道館」などの、グループとして実現したいことがあまり掲げられることはない。さくら学院のメンバーが持っている目標は、「さくら学院の活動を通して、スーパーレディになる」というものだ。さくら学院はあくまで成長の場なのだ。これもさくら学院が学校といえる所以の1つだろう。また、このように本物の学校であるさくら学院だからこそ、1年の集大成となる卒業式は何ものにも代えがたいイベントとなるのである。
純粋にさくら学院の活動のために、そしてその活動を通して成長するために、彼女たちはレッスンを重ねて、ひたむきに努力して、時には話し合って、ぶつかったり、泣いたり、笑ったりしながら、その年度のさくら学院の完成度を高めていく。
こうしたさくら学院に、過ぎ去った青春を重ねて懐かしくなったり、あるいは少女たちのまばゆい青春の美しさに心を洗われたりしながら、父兄である僕たちは、1年間を通して、触れることのできない距離から見守り続ける。だから、さくら学院は特別なのだ。