10/24 ひめキュンフルーツ缶 シークレットアコースティックライブ

アルバム『情熱、エモーション。』購入の応募特典に当選した人だけが参加できるシークレットライブとして開催された、ひめキュンフルーツ缶のアコースティックライブに行ってきた。バンドのアコースティック演奏に全編生歌で披露されたそのライブは、純粋に「音楽を楽しむ」という幸福への遭遇であった。

そもそもひめキュンは歌を売りにしたアイドルではない。それはライブは基本的に被せ音源であるということからも分かる。しかし決して歌えないわけではないということが、今回のアコースティックライブで証明された。

バンドによる演奏が行われる中、メンバーは黒のドレスで登場し、普段のタンクトップなどの奇抜でロックな衣装とのギャップもあり、思わず溜息が漏れるほど美しい。恋の終わりを歌う歌詞と悲哀に満ちたメロディが印象的なバラード「悔しいけど、スキ」から始まったライブは、その歌い出しを聴いた瞬間から、生歌への不安が驚嘆と感動に変わり、すっかり聴き入ってしまう。いつもならばフロアを激しい熱狂の渦へと誘う楽曲たちも、アコースティックアレンジによる良質なセッションによって、情感的でゆったりとした時間の流れを生み出し、フロアは音楽を聴くことの純粋な心地良さに満たされていた。

ボサノヴァアレンジされた「ストロベリーKISS」といったアコースティックならではのレアなアレンジもあった。ニッポリヒトのカバーであり、青春パンクが持つストレートで力強いメッセージが印象的な「バズワード」「例えばのモンスター」「絶望よ!こんにちは」といった曲はアコースティックで演奏されることによって、曲が持つメッセージ性は蒸留され一層濃度が高くなり、ストレートのウイスキーのように熱く喉を通っていく。

印象的だったのはまいまいこと岡本真依のシンガーとしてのレベルの高さだ。歌の音程が全くぶれず安定しており、キュートで透き通っている中にも芯のある声質を持つことで、真っ直ぐに耳に入ってくる。「ネバーエバー」の落ちサビなどではとりわけ際立ち、非常に聴かせる歌を歌っていた。

ひめキュン初の試みだったアコースティックライブでは、幾多のアイドルグループの中でも全く引けをとらない歌唱力があるということを我々に見せつけた。
これまで生歌を歌ってこなかった彼女たちが、シークレットとは言え、あえて歌のみで勝負するライブを行ったということの意味は大きい。今後ひめキュンのライブが生歌中心へと変わっていくことに、十分な期待が持てるのではないだろうか。